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8月, 2024の投稿を表示しています

【2024.8.24】人間関係

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演劇に限らず、物語の中の人間関係はドラマを面白くする上で、とても大切な要素です。演劇ではどう見ても若者が老け役となって親子を演じたり、どう見ても真面目そうないい人が「ワル」を演じるような無理をする場合もチラホラ見受けられますが、このチームは年齢幅が広いので、親子関係なども無理せずに作ることができます。シニア劇団や若い人ばかりの劇団より、そうした関係づくりで幅が出るのはこのチームのメリットです。 また、ドラマが広がりそうな関係や、相性の組み合わせも大切です。台本が先に完成している場合だと、台本を読み解き「役作り」しながら関係も探るのですが、村上さんのやり方は、即興を使って何パターンかの関係を試しながら、面白くなりそうな関係を抽出していきます。 この方法は、短期間で無理ない関係性が作り出せるので、完成度を上げるにはとても合理的です。  

【2024.8.17】エチュードの笑い

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 以前から何度もレポートしているように村上さんはエチュードと呼ばれる、即興を使って作品のベースを作っていきます。 この「エチュード」練習では色々なシチュエーションを演出家が指定してそれを受けて役者さんたちが演じるのですが、不思議なことに概ね笑えるお芝居になるのです。今日も結構マジギレするような状況が与えられていたのですが、なぜか笑いになる。演じ手は無意識に深刻さを避ける傾向があるのかもしれません。 でもそうであっても、面白さを生む多様さは大事だと思います。笑えるシーンでも、笑いの要素がいろいろあるほどお芝居は豊かになります。話の内容(ネタ)だけでなく、演じ方とか、キャラクターの設定とか、パターンはもっともっとあるはずです。つい過去に受けた演技にすがりたくなるのも役者の性ですが、稽古場ではチャレンジできるのがいいところ。失敗を恐れずエチュードでどんどんチャレンジしていってもらいたいと思います。

【2024.8.3】テキストを身体におとす

 稽古はまだ序盤で、過去の作品のテキスト(台本)などを使った稽古が続きます。 さて、演劇(映画などもそうですが)多くの場合台本を元に作品を作ります。台本は当たり前ですが文字で書いてあって、それを演じる人間は文字を読み解き、理解して演技をします。日本では割と劇作兼演出の人が多くて、その中には劇作重視タイプと演出重視タイプがいるように思います。劇作重視タイプの人は、台本をまずは完成させて、それを俳優に覚えてもらって演出をつけていく。台本が完成したらあまり修正しないという傾向があるように思います。演出重視のタイプは、役者さんに合わせて台本を書き、割と直前まで台本の変更がある場合が多いように見受けられます。 どちらがいいとは一概に言えませんが、台本が先にある場合が主流だと思います。台本を覚えて役をこなす上で、役者さんに求められるものが大きくなる場合もあります。特に経験が少ない方が出演する公演では、作品の完成度を上げるには台本に書かれた役を演じ切るための練習にそこそこ時間がかかるというのが実感です。 時間がかかる原因の一つは、書かれた言葉をあたかもその人物が喋っているように演じ手が自分の体に「おとす」のに時間がかかるからだと私は思っています。セリフを覚えたからそれができるわけではなく、いわゆるキャラクターをつかむことが必要で、つかんだ上で自由自在に動けることが求められるわけです。経験が浅いと、この感覚がなかなかつかめないのです。 逆につかめると演技は急に楽しくなります。演技が今ひとつ楽しくない方は「つかめ」ずにもやもやしている場合も多いと思うので、どうしたらいいのか指導者や経験のある役者さんなどに相談してみるのもいいかもしれません。

【2024.7.27】サブテキスト

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 多くの登場人物が出てくる作品では、人物それぞれの人間関係が絡み合うこともめずらしくなく、少ししか登場しなかったり、セリフがわずかしかなかったりしても、作品の中でしっかりとした存在を残す演技が求められたりします。 例えばセリフが少なかったとしても、その人物の背景・性格・その場面での気持ちなどを掴む必要があるのです。劇作家が書き込んだキャラクターをしっかり捉えていないと、見ている方には腑に落ちない作品になってしまいます。 登場人物が多い作品では限られたセリフやト書の情報からそうした人物背景やキャラクターを読み解くことになります。このところの練習で使っているテキストはそんな作品のものです。登場しているが喋っていない時間も長かったりすると、そこでどんな心境でいるのか何をその人物は考え意識しているのかなどを想像して「役」を作り、喋っていない時でもしっかり存在しなければなりません。 作家は自分が作ったサブテキストを基にセリフなどを書き上げているので、演じ手もそれを読み解き役作りをするわけです。 ちなみに「サブテキスト」はウィキペディアによると次のように説明されています。 「 サブテキスト ( 英 :   subtext 、言外の意味)または ポドテキスト ( 露 :   подтекст )とは 創作物 の中で、 登場人物 や著者が明示的に文字としては現していない事柄を指す。 物語が進行するにつれて、聴衆や読者がその内容を察することができるようになるものである。またサブテキストはストーリーの中では副次的にしか扱われていない登場人物の考えや動機に関する内容も含む。さらにサブテキストは物議を醸しかねないテーマを取り上げるためにも使われる。」 言葉に表れない言外の意味を読み解くのは、大げさかもしれませんが、人間を知ることに繋がっていて興味深いです。もちろん劇作を読み解いた時に例えば名作の名作たるゆえんがわかって嬉しかったりもします。役者さんがサブテキストを読み解き、なんとなく感じていることを言語化して具体化する作業は、とても演劇的です。こうした作業に慣れてくると、劇作家のまなざしなどが理解できてきて、人や社会というものをより深く見つめられるようになる気がします。それは演劇の価値ある効果の一つだと思います。ただし、読み解けてもそれが演じられるかは別問題です...