【2024.7.27】サブテキスト


 多くの登場人物が出てくる作品では、人物それぞれの人間関係が絡み合うこともめずらしくなく、少ししか登場しなかったり、セリフがわずかしかなかったりしても、作品の中でしっかりとした存在を残す演技が求められたりします。

例えばセリフが少なかったとしても、その人物の背景・性格・その場面での気持ちなどを掴む必要があるのです。劇作家が書き込んだキャラクターをしっかり捉えていないと、見ている方には腑に落ちない作品になってしまいます。

登場人物が多い作品では限られたセリフやト書の情報からそうした人物背景やキャラクターを読み解くことになります。このところの練習で使っているテキストはそんな作品のものです。登場しているが喋っていない時間も長かったりすると、そこでどんな心境でいるのか何をその人物は考え意識しているのかなどを想像して「役」を作り、喋っていない時でもしっかり存在しなければなりません。

作家は自分が作ったサブテキストを基にセリフなどを書き上げているので、演じ手もそれを読み解き役作りをするわけです。

ちなみに「サブテキスト」はウィキペディアによると次のように説明されています。

サブテキスト: subtext、言外の意味)またはポドテキスト: подтекст)とは創作物の中で、登場人物や著者が明示的に文字としては現していない事柄を指す。物語が進行するにつれて、聴衆や読者がその内容を察することができるようになるものである。またサブテキストはストーリーの中では副次的にしか扱われていない登場人物の考えや動機に関する内容も含む。さらにサブテキストは物議を醸しかねないテーマを取り上げるためにも使われる。」

言葉に表れない言外の意味を読み解くのは、大げさかもしれませんが、人間を知ることに繋がっていて興味深いです。もちろん劇作を読み解いた時に例えば名作の名作たるゆえんがわかって嬉しかったりもします。役者さんがサブテキストを読み解き、なんとなく感じていることを言語化して具体化する作業は、とても演劇的です。こうした作業に慣れてくると、劇作家のまなざしなどが理解できてきて、人や社会というものをより深く見つめられるようになる気がします。それは演劇の価値ある効果の一つだと思います。ただし、読み解けてもそれが演じられるかは別問題です。わかっていても演じきれない場合には別の演技トレーニングが必要となるわけです。



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