【2022.7.16】登場、退場


 演劇では、舞台の外で起こっていることを、登場人物のセリフや演技で観客に想像させる(想起させる)手法がよく使われます。

例えば、慌てふためいた様子で登場してきた人物が、「大変だ、火の手がこっちに迫ってるよ!」と切実に訴えれば、舞台の外で深刻な事態が差し迫っていることを観客は知らず知らず、受け入れてしまいます。

演じる側に立てば、外の世界で起きている状況を、いかに表現するかによって、観客が疑いもなくその世界に引き込まれるか、あまりリアリティを感じられずしらけるかに別れてしまうわけです。
何しろ、舞台の袖では何も起きていないのですから、あくまで俳優がその状況を想像によって作り出して、全身を使ってその状況にある人物を演じなければなりません。観客がその演技にリアリティを感じられれば、その状況に引き込まれ、次なる展開をじっと見守ってくれるでしょうし、逆にリアリティを感じられないと、「嘘っぽく」見えてついてきてくれないのです。

今日の練習では、そんな登場と退場の効果やテクニックについて解説を聞いたのちに、台本を使って、舞台上の世界と舞台の外の世界を意識して演技してみました。

ちなみに、今年の4月に行われた前回公演は、舞台は劇場(ホール)の控え室という設定でした。観客からは見えない「ステージ」では、着々とファッションショーの準備が進行しているようです。観客には会議室のような控え室しか見えませんが、登場人物の会話や演技で着々と進む準備の様子や、ステージの状況、ショーの様子などを想像させました。まさに今日の練習のようなことが詰まった作品でした。

前作や今日のような練習を経て、見えていない世界をよりお客様に感じてもらえる腕もきっと上がっていくことでしょう。


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